メキシコの橋梁構造を保護するキスラーのWIMシステム


橋は寿命が限られている繊細な構造物です。ジェノバで事故が発生してから、監視を強めることの重要性が改めて明らかになりました。メキシコ西部の実例が示すとおり、キスラーのWIMシステムは、橋梁の使用状況を効率的に監視し、必要に応じて制限することができます。

2018年1月に高速道路橋「El Carrizo」(エル・カリソ)でディーゼル燃料を満載したタンクローリーが横転、炎上するという重大事故が発生しました。幸いにも負傷者はありませんでしたが、橋の損傷を検査する必要から道路は数週間にわたって閉鎖されました。エル・カリソ橋の橋脚の高さは226 mと、北米で2番目の高さです。この橋は2013年秋に開通した、北米コーディレラの一部をなすシエラマドレ山脈を横断する壮大なルートにあります。

この新しい道路によって、海岸都市マサトランから内陸部のドゥランゴに至る、観光的にも産業的にも重要な区間の移動時間が従来の6時間以上から3時間に短縮されました。しかし橋が閉鎖されてからは、トラックは山脈を大きく迂回しなくてはならず、2018年8月末にこのルートが完全に再開するまでの移動時間は8時間以上もかかることになりました。重大事故の再発を防止するため、特別なハードウェアおよびソフトウェアを開発したSEMIC社によって、2箇所の測定点にWIMシステムが設置されました。全重量が許容値を超える車両を前もって自動的に識別し、最寄りの料金所で通行を規制できるようになりました。キスラーが施工責任者に提供したのは、Lineas WIMセンサ(9195GC41)4個とWIMデータロガー(5204AC04)を備えたWIMシステム(型式 9835A)です。

Prevent damage by overloaded vehicles – with Weigh In Motion by Kistler.

Prevent damage by overloaded vehicles – with Weigh In Motion by Kistler.

正確かつ容易に設置可能

設置を担当したSEMIC(Servicios Mexicanos de Ingenieria Civil)社でCEOを務めるCarlos Lopez氏は、「キスラーの製品を選んだ決め手は、Lineasセンサの高い精度と、当方のシステムに組み込みやすいという点でした。このソリューションは当社のお客様の期待を完璧に満たすもので、我々としても非常に満足しています。」と述べています。SEMIC社は、この高速道路を管理するメキシコの地方行政機関CAPUFE(Caminosy Puentes Federales)から、過積載車両を検知する自動化システムを依頼されました。その技術的な詳細については、CAPUFE技術部のFrancisco J. Moreno、Andres Aranjoの両氏が担当しました。Lopez氏は「特にキスラーのデータロガーは、自由度が高く、ユーザーフレンドリーであることが印象的でした。おかげで容易にCAPUFEの要求を満たすことができました」と述べています。

測定装置は2箇所に設置されました。しかし、東向き線の「Coscomate」地点では料金所の直前に設置されたのに対して、西向き線の「Mesillas」では料金所の8km手前に設置されました。「物流上の考慮もさることながら、道路の状態がセンサの最適位置の決定に重要な要因になります。私たちは、最適な測定精度が得られる設置位置が決定できるようSEMIC社をサポートしました。お客様の希望を叶えるかたちで当社のシステムの性能を効率よく発揮できるように、2018年からこのようなサービスをグローバルに提供しています。」と、キスラー・アメリカのRoad &Traffic営業責任者のJeffrey Riceは説明しています。SEMIC社は100人の従業員中20人をこのプロジェクトに投入し、さらにWIMシステムの性能を確実に発揮できるよう、設置場所による舗装の厚さやたわみ、交通量の変動の測定など、広範囲にわたる予備調査を実施しました。

過積載車両を確実に検出

海岸と内陸部を結ぶこの道路の大部分は1車線で、通行車両のほとんどを大重量のタンクローリーやトラック(トレーラータイプを含む)が占めており、その平均速度は90 km/hです。測定ステーションにはそれぞれ2個のキスラー製Lineasセンサが設置され、各車両の軸重と全重量を正確に測定しています。新しいWIMシステムは、道路の使用状況を車種別に正確に分析することができ、すべての車両の軸重と全重量も測定できます(図を参照)。このようにして、最大重量が59.4tを超える車両を、2018年8~9月の期間だけでも135台検出しました。

システムの設置は2018年夏に実施されました。「最初のセンサを設置する時に当社の技術者がキスラーのトレーニングを受けましたが、その後2つ目のステーションの設置はSEMICが独力で行うことができました。データロガーのセットアップとソフトウェアによる評価も問題なく実行できました」と、Lopez氏は満足げにこう話します。8月末に3軸の30tの車両を用いて校正を行い、年末にはキスラーの技術者の協力の下で、メキシコの試験機関による正式な認定を受けました。

Lopez氏は最後にこうコメントしています。「キスラーのシステムのおかげで実用的なWIMソリューションをスピーディに設置でき、管理当局の要請にも最良のかたちで応えることができました。結果が大変良かったので、当社は北東部のCadereytaにある第2ステーションをすでに稼働させています。2019年も新たなプロジェクトの展開が見込まれており、同じくキスラーの製品を採用するつもりです。」